他者の叫びに対して、アートは耳を傾けることができるのでしょうか。
他者の辛苦に対して、アートは応答可能性(responsibility)をもちえるのでしょうか。
他者の訴えに対して、アートは応答責任(responsibility)を果たすことができるのでしょうか。
R2
Responding: International Performance Art Festival and Meetingは、パフォーマンスアートを通じて社会的課題に応答する(respond)こと、そしてアートと社会の批判的な対話を進めることを目的とした新たな試みです。
本事業は社会が直面する困難な課題について調査・制作・発表を行うことで、多角的な視点から当該課題に対する理解を深めていきます。
Respondingは、2018年に東京都/福島県で開催された第1回芸術祭(R1)に引き続き、2019年は日本・大阪/フィリピンを舞台に、国境を越えた相互理解に基づく新たな芸術表現の可能性を模索してきました。問題認識の共有と対話へと開かれた回路を、複数の地域に跨って形成することで、本事業は各地域に固有の社会的課題に対する相互の理解を、身体表現を起点として深化させます。
Respondingは現在、調査研究を基盤とするアートプロジェクト“monumentED” (R2)を、日本とフィリピンにおいて展開しています。所謂「慰安婦像」に関する近年の国際的論争が例示するように、モニュメントはしばしば、過去の出来事がもつ意味・解釈をめぐる政治的なせめぎ合いの場として機能します。
ただし、過去の出来事を指し示すという、モニュメントがもつ指標作用は、記念碑・記念像等の物理的に実体化された建造物・彫刻に限定される働きではありません。
R2 monumentEDはまず、公共の建造物・彫刻として実体化され、共同体の集合的記憶として収斂される以前の、多様で個別的な人々の経験それ自体が、謂わば「原モニュメントproto-monument」として過去の出来事を指し示す様相を明らかにします。
そして、場合によっては共同体の支配的な物語から逸脱し、公共の建造物・彫刻といった大文字のモニュメントからこぼれ落ちてしまうような、人々の生きた経験が紡ぎ出す小さな歴史=物語をすくい上げていきます。
その上で、こうした小さな物語が取捨選択され、実体的なモニュメントへと具現化されていく契機に光を当てることで、本事業はモニュメント化の過程がはらむ社会的・政治的・芸術的な含意を解き明かします。