お知らせ

わたしたちDAIS石巻は、市民の手で震災の生きた記憶を伝える資料館の整備を進めています。

一般的に震災の伝承館には、出来事を象徴する重要なモノや、出来事を生き延びた人の貴重な証言を長期的に保存する役割があります。それは過去のある時点で固定された記憶を、誰かに受け渡すという考え方を前提としています。

一方、わたしたちの震災資料館準備室(仮称)は、人と人、モノや空間との相互行為から、その時、その場で生じるダイナミックな記憶を重視しています。

人々が記憶を想起し、語る、その活動によって成立するパフォーマティブな資料館を目指しています。

そこでは出来事を体験した人、そうでない人などの多様な人々が交わり、言語だけでなく、非言語の芸術を通して記憶を共有します。

このようなコンセプトをもった伝承館はこれまでありませんでした。

「生きた記憶の資料館」は実現できるのでしょうか。できるのだとすれば、どのような方法で実現できるのでしょうか。

このような問いをみなさんと共有しながら、その探求のプロセスを始めたいと思います。

今回の食事会&座談会は、「次世代への記憶継承」をテーマに、石巻で記憶の継承に取り組む若手の皆さんをお招きし、柿の収穫、食事会、作品鑑賞、対話を行います。石巻には震災の記憶を語っていない人がまだたくさんいます。

語り難い経験を語るには、安心して話せる関係性が重要です。

関係性をつくるには、経験を共有することが役立ちます。

そこで、今回は柿の収穫、食事会、芸術作品の鑑賞によって語りの基礎となる関係性をつくった上で、対話する企画を考えました。

複雑な記憶を言語化することは簡単ではありませんが、経験を共有したり、他者の記憶を聞くことによって、自身の経験が整理され、過去の経験の新たな意味が見えてくるかもしれません。

すでに記憶継承に携わっている方々はもちろん、なんとなく震災のことが気になっている方や、表現することに関心のある方、逆に表現することにためらいのある方など、さまざまな人の参加をお待ちしています。それぞれの人にとって気づきが生まれる場になれば幸いです。

DAIS 石巻(ダイス イシノマキ)について

DAISとはDiversity Art Interactive Studioの略称です。直訳すれば「多様な、アートの、相互作用が行われる、工房」となります。芸術の専門教育や、年代、国籍、障害などにかかわらず、参加を希望するならば誰でも参加できる学びの場です。そこには野生の動物や畑の農作物などのmore than humanも含まれます。

宮城県石巻市の約300坪の広大な敷地で、廃業農家をセルフDIYしながら、次の活動を行っています。

  • 国内外のアーティストの滞在制作「DAIS AIR」(年1回)
  • 市民参加型の芸術祭「ちょどフェス」(年1回)
  • 東日本大震災の資料館「震災資料館準備室(仮称)」
  • 協働農地「DAISファーム」(2か月に1回程度)

「循環する多様性を問い続ける」ことをテーマに、活動の目標は参加する人がプロセスのなかで柔軟につくっていきます。関わる人々がやりたいことを実験できる開かれた場です。

DAISファームについて

松川広美さんを中心に、地元の真野地区の区長さんに教えていただきながら、2022年よりDAIS石巻の敷地内にある耕作放棄地の開墾(草刈り、石拾い、土づくり)を始めました。

初年度の収穫は、じゃがいも、かぼちゃ、なすなどです。

それ以外にも、DAIS石巻の敷地内にはよもぎ、たらの芽、ふき、みつばなど四季折々の自然の恵みがあり、以前は果樹園だったことから、いちじく、栗、柿などの実りがあります。

実施概要

日時

2023年11月4日(土)10:00-15:30

場所

DAIS 石巻(石巻市真野字内原228-2)Map

石巻駅より車で約15分。駐車場は30台まで無料です。

プログラム

(1)10:00-12:00柿の収穫と干し柿づくり

 DAISファームの柿を収穫して干し柿を作ります。

(2)12:30-13:30食事会&作品鑑賞会

 DAISファームで収穫したとれたての野菜を使って、地域の人々が家庭料理をふるまいます。震災をきっかけに生まれたランドセル型のアート作品を鑑賞します。

(3)13:30-15:30座談会 

 石巻で記憶継承に携わる若手の3人のお話を伺います。

参加費

 1プログラム500円、(1)~(3)通しで1,000円

お申込み

下記のQRコード(Googleフォームにリンクします)からお申込みください。

https://forms.gle/VB7HGc6LGgtxrnmD8

座談会 登壇者

ちばふみ枝

(アーティスト、mado-beya)

1981 年石巻市生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース修了後、都内を中心に作品を発表。2011 年東日本大震災を機に U ターン。現在は、アーティスト・ラン・スペースとして「mado-beya」を運営し、拠点として活動している。レリーフを自立させる手法で彫刻作品を制作する傍ら、津波で被災した実家の手入れを 2019 年より再開し、その記録写真を発表している。

志村春海

(石巻アートプロジェクト実行委員会)

1988 年石巻市生まれ、東松島市育ち。筑波大学芸術専門学群を卒業後、茨城県大子町での 8 ミリフィルム収集事業や、日光市足尾地区で聞き取りを担当。2016 年から U ターンし、Reborn-Art Festival スタッフとして働く。

 清水葉月

(一般社団法人Smart Supply Vision、震災を伝える若者たちのコミュニティ発起人)

1993年福島県浪江町生まれ。2016年から宮城県女川町・石巻市で放課後の学習支援や子どもの声で運営する児童館職員など子ども支援の活動に携わる。現在は(一社)Smart Supply Visionにて、子ども若者の声を届ける”未来をつくる声を届けるプロジェクト”を行う。震災を語る若者たちのコミュニティ発起人。

展示概要

生きた記憶を伝える資料館(仮)の設立に向けて、これまでわたしたちが行ってきた活動の一部をパネルや作品を通してご紹介します。

(1)【パネル展示】R5「遺構|以降」シンポジウム「のこったもの/のこすもの/のこるもの」

今年4月に石巻市震災遺構・門脇小学校で実施した国際シンポジウムの報告です。シンポジウムは震災遺構の活用をテーマに、ホロコーストの記憶アートを専門とする芸術学者の香川檀さんや同施設の学芸員である高橋広子さんをはじめ、石巻市内のアーティストやアートマネージャー、歴史家、アメリカ、シンガポール、ドイツ、韓国などのパフォーマンスアーティストなどが議論しました。

(2)【パネル・映像展示】アジアの災禍とアート、アクション勉強

昨年11月から全8回実施した記憶とアートに関する勉強会の報告です。自然災害や戦争、公害の記録や表現に携わるアーティスト、学芸員、研究者、教育者、アクティビストなど、国内外の多彩なゲストたちが、東日本大震災、阪神・淡路大震災、フィリピンの自然災害、韓国・沖縄での歴史実践などについて報告し、多角的な視点から記憶継承について考えました。

(3)【作品展示】遠足プロジェクト・遠足プロジェクトアジア

このプロジェクトは、2012年に震災の支援物資のマッチングの難しさから使用されず廃棄処分となっていた中古ランドセルをつかって、カナダの35組のアーティストが作品を制作したことから始まりました。美術館にあるアート作品は触れることができませんが、遠足プロジェクトの作品は触れて、背負って、遊ぶことができます。作品を背負うことは、誰もが震災の当事者であるというメタファーでもあります。プロジェクトは国内20か所、カナダ3都市を巡回後、アジア8か国で展開しました。多様な作品に触れてみてください。

お問い合わせ:aadastudygroup@gmail.com

主催:遠足プロジェクト実行委員会

助成:3.11メモリアルネットワーク基金2023年度助成、令和5年度宮城県NPO等による心の復興支援事業補助金

DAIS_ISHINOMAKI

DAIS_石巻は、「循環する多様性を問い続ける」場です。現代社会におけるSDG’Sの達成や次世代育成につながる新たなラーニングの場とは、どのようなものなのでしょうか。「DAIS」とは、Diversity Art Interactive Studio)の略称です。多様な人たちが交わるきっかけとなる場、そんなイメージでしょうか。

「循環する多様性を問い続ける」のは、子どもからシニア世代まで、多様性のある定住、移動人口を含めた包括的なコミュニティ全般;外国人移住者、技能実習生、障害者、近隣住民、アーティストなど、参加を希望する人、みんなです。あるいは、野生の動物や畑の農作物も参加者と言えるのかもしれません。

彼らとともに現在宮城県石巻市の山奥の廃業農家の跡地をセルフDIYしながら、国内外のアーティストの滞在制作、地元の市民参加型の演劇、伝統芸能、パフォーマンスアートできる屋外劇場、市民目線での東日本大震災伝承館(ワークショップや語り部、「遠足プロジェクト」の常設展示室)、共同で活用する畑+キッチン、といった複合施設の立ち上げ準備をしています。具体的な目標の達成をゴールにしないで、問い続けること、そしてその過程に常にあるという意識を保ちつつ、緩やかに循環していくことをありのままに、そして有機的に進めていきます。